the other side 3

The other side of urban city life
リリース記念対談
HAPPYSAD × JEFFREY YAMADA
第三回「感覚的につむぐ」

< アルバム「The other side of urban city life」全曲試聴 >

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山田:そう。そして、そのあとにアルバム四曲目「Everday」が続くわけですね。こういうのって、やっぱりつくるのに時間とかかかるの?

草野:いえ、多分アルバムの曲の中で一番「Everyday」は時間かかってないと思いますよ。やってるうちに自然に出来ましたね。

山田:ほう。

草野:こういうのって理屈や理論でつくるものじゃないというか。
フィーリングでつくるというか。例えば、アメリカのヒップホップ・アーティストの曲の作り方って、サンプリング(レコードやマイクを用いて音素材を収録すること)した音の積み重ねで曲を作っていくじゃないですか。
そういう作り方も面白いと僕は思っていて。

山田:それってガラガラポンみたいな世界だね。
ガラガラを引いて、「おっ、これが出てきた。あたり。」みたいな。

草野:(笑)
むこうのミュージシャンて面白いじゃないですか。サンプラーに自分の好きなレコードのフレーズを入れて、つむいでいくみたいな。そういうサンプリングの
発想でつくっていった感じですね。
色んな音を集めてきて、刻んで使うという。打ち込みも混ぜ込みながら。

山田:なるほど。

草野:今回特にそういう発想でつくったのが、四曲目「Everyday」と八曲目「Here & there」ですね。後者はアーバン・ヒップホップぽい曲ですけど。
これもサンプリング的な発想を入れた曲ですね。

山田:ヒップホップとか結構好きなの?

草野:そうですね。実は結構ヒップホップ好きなんですよ。
と言ってもいわゆる「俺達ワルだぜ」みたいなギャングスタ・ラップとかはあんまり聴かないですけどね。聴くのはアンダーグラウンド・ヒップホップですね。
90年代なかばに出てきたDJシャドウとか日本のDJクラッシュとかがつくっていたトリップ・ホップが好きでしたね。ヒップホップのリズムをベースにして、その上にアンビエントみたいな空間的な音像が乗っかっているようなものが好きだったので。それ以降だと、マッドリブとかJ・ディラが好きですかね。

山田:そういうのって、中国がすごいよ。

草野:そうなんすか?それはどういう・・・。

山田:上海なんかのクラブに行くとさ、ビートはヒップホップなんだけど、
上に乗っているのが中国ぽい楽器だったりとか、シンセサイザーを使うのでもあまーい感じでさ。
そこに中国語のラップが入っていて。

草野:面白そうですね。聴いてみたいなあ。今回、アルバム六曲目に入っている「Imagination」(ブックレットだと五曲目という誤記載になっている)。
当初はこの曲もヒップホップのビートがベースになる予定だったんですよね。その上にこういう旋律を乗せようかなと思っていて。でも、似たような感じになるのが嫌だったのでやめたんですけど。

山田:ふうん。

草野:ヒップホップ的な発想でつくったインスト曲としては「Everyday」と「Here & there」。サンプリング的な要素をまったく使っていないインスト曲は
「Imagination」という感じですかね。「Here & there」は個人的には好きな曲なんですけどね。自分の子供はかわいいというか。

山田:確かに、カッコイイよね。

草野:「Here & there」はベースやオルガン、ギターなんかは自分で弾いてるのですが、サンプリング音を混ぜています。

山田:実はこの曲ってさ、アルバムタイトルの「Urban city life」の
イメージを一番あらわしているような。

草野:都会の街並み、ですかね。街並みでも、朝とか昼とか夕方とかあるんだけど、ここで夜になるイメージですね。

山田:このサックスは吹いてるんですか?

草野:これはサンプリングですね。サンプリングしたものを加工してああいう形にしています。

山田:でも面白いよね、サンプリングしたものを使って演奏するとさ、
普通の指では生まれない音が出来そうだよね。

草野:「Everyday」なんかでも、ピアノのフレーズを切り刻んで再構築して、
原型をとどめない形にしているので、まったくライブで再現することを念頭に作っていない感じですよね。

山田:そう考えると、今回Aメロ、Bメロ、サビ、っていう構成がある曲は全体の半分くらい?

草野:そうですね。今回減らしました。というか自然に減ったんですけどね。
Aメロ、Bメロ、サビ、という作り方はよくするんですけど、飽きたというか、沢山つくってきたというのもありますし。あとはもう曲に任せるんですね。
ここはこのままサビに行ったほうが気持ちいいとか。

山田:「Sweet relax」なんかも、パフュームが完璧な振り付けで踊ったりしたら楽しいだろうなあ(笑)

草野:あの曲も作ってる時、面白かったですね。感覚的につくってる部分がわりとあるんですよね。電子音が鳴っている部分を録りためておいて、切り刻んで、
曲の上に感覚的に配置してゆくという。

山田:そうかあ。

草野:曲作りって、あらかじめ構成だったりイメージを最初から考えて作ることが多いと思うんですが、今回のアルバムの面白さって、そういうものを最初から
あまりイメージしないで音をつむいでいくところが面白かったりして。

山田:そうね。普通にギターを持ってシンガーソングライターやってます
というのとは違うもんね。コードのCがきたら、次はAm7でとか、

楽器やってる人だったらやっちゃうもんなあ(笑)

草野:よくやっちゃうコード進行てありますよね(笑)

山田:でも、それやらないのが今回のアルバムのいいところなわけだ(笑)
曲をつくる時に使う楽器でも違ってくるもんね。やっぱりそういう意味ではギターかねえ?

草野:ギターで作るものもあれば、サンプラーで作る曲もあり。打ち込みやキーボードで完結しちゃう曲もあり。本当に楽器変えると出来る曲って違いますね。
バンジョーの弾き語りに変えただけでも出来てくる曲って違いますもんね。

山田:そう思ったら、どういう方法で曲をつくったら自由なのかなあ?
アカペラとかになるのかなあ。話は戻るけどさ、「Feel again」いいよねえ。

草野:これこそ、Aメロ、Bメロ、サビという感じがしますけど。

山田:一見、他の曲に埋もれそうになりながらも、トッド・ラングレンぽいというかさ。

草野:まったくそういうものを意識して作っていませんが(笑)
なんかこの曲も空間的な曲になってますよね。

山田:空間って、機材の進化したみたいなものも大きいんじゃない?

草野:というか、今回は空間・奥行きみたいなものを表現したかったんですよね。一人で録音していると、音像が平面的になってしまいがちなんですよ。

山田:空間て難しいよね。あんまりそれをやろうとし過ぎるとベッタベタになってしまうし。

草野:ええ。そうですね。過剰にやると音が聴き取りにくくなってしまったりするので。

山田:そこはやっぱりプロの仕事だよなあ。

草野:思い描いた世界をつくれたような気がします。一個一個の音はとてもシンプルなんですけどね。それらがからみあって、良いあんばいになったと思います。

山田:ラストの「Lily」のアコースティックバージョンは、音はシングルバージョンと変えたの?アコギの音が良くなっているし。

草野:アルバム用に微調整をしましたね。ありがとうございます。

山田:これは是非出世したら、後ろにお姉ちゃんの弦楽四重奏でやって欲しいですね(笑)

草野:やりたいですね(笑)

(ここで、店員さんがオーダーをとりに来る)

山田:すいません。ジンジャーエールを下さい。

草野:ジンジャーエール、ツーでお願いします。

山田:ジンジャー辛口で。

草野:ここでビールにいかないところが偉いですね。いつもだと行ってしまいがちですが。

山田:そういえば、(iPodを聴きながら)なんでこの曲(「Get high together now」)をアルバムに入れなかったかね?

草野:過去の曲も、また今後再録音してゆくと思いますよ。
今回は「Lily」と「ソウルボトム」を録音し直した時点で飽きてしまいました。
あとは新しい曲も入れたかったので。

山田:それは大事なことですね。

対談第四回に続きます